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奴隷制度を学ぶゲーム

先日、凄いゲームを入手・プレイしました。

写真左の南部プランテーションから逃亡がスタート。左下が労働市場、右下がロストした奴隷、丸いトークンが奴隷狩り。奥にカードやアクショントークンが並ぶ。ちなみにカナダ付近に出ているカードがタフマン。
写真左の南部プランテーションから逃亡がスタート。左下が労働市場、右下がロストした奴隷、丸いトークンが奴隷狩り。奥にカードやアクショントークンが並ぶ。ちなみにカナダ付近に出ているカードがタフマン。

それは「Freedom:The underground Railroad」(フリーダム~アンダーグラウンド・レイルロード)という、アメリカ人ゲームデザイナーによる2013年の作品です。

 

何が凄いかって、そのテーマ。何とアメリカの奴隷制度をテーマとしているんです。

プレイヤーは奴隷制度廃止論者になり、協力して南部のプランテーションにいる奴隷たち(木コマ)を自由の国カナダへ逃亡(移動)させたり、逃亡に必要な資金を獲得するためのアクションをしていきます。

 

ゲーム終了時までに決められた数の奴隷をカナダへ逃がし、一定の「世論(サポート)」を得ればプレイヤーたちの勝利です。

もちろん、そんなに簡単にはいきません。奴隷の移動は原則一歩一歩で時間がかかりますし、ラウンドの最後には労働市場から多くの奴隷がプランテーションに送り込まれ、一定のキャパを超えた分はロストします。一定数ロストするとゲームオーバーです。

ゲーム中盤から大量の奴隷が送り込まれてきたり、奴隷が移動する度に5人の奴隷狩り(丸いトークン)がその奴隷に近づいてきて、捕まってしまうとまた奴隷市場へ連れ戻されてしまったり。決して一筋縄ではいきません。

当時の逃亡がいかに大変だったか、その再現性が素晴らしいです。

 

更に興味深いのは、この作品は1800年~、1830年~、1860年~と三つの時代構成で成り立っており、それぞれの時代に合ったカードが出てくることです。カードには、当時の史実や人物が描かれ(簡単に説明書きもある)、それを見ているだけでも学びがあります。例えば南北戦争やリンカーン、そしてハリエット・タフマンなど。ハリエットはカナダへ何往復もし多くの奴隷を逃がした黒人女性の英雄です。この作品で初めて知りましたが、過去にドル紙幣になったり、映画化されたりしているんですね。ちなみにタフマンのカード、プランテーションから二人の奴隷を一気にカナダへ逃がすという鬼強カードです(笑)ただカードはランダムなので、必ず毎回出てくるとは限りませんが。

 

ではゲームとして面白いのか?というと、ちゃんとゲーム性も担保されています。(というかこの作品はシリアスゲームではなく、あくまでも遊びのゲームとして制作・販売されているので当然ですが)

いかに上手く奴隷狩りをかいくぐり、どの奴隷をどのタイミングでどう移動させるか?いかに多くの資金を効率よく獲得するか?どのカードをどのプレイヤーが取ってどう使うか?それぞれのプレイヤーの特殊能力をどう活かすか?といった、戦略性やパズル性がちゃんとあります。(とは言え難解ではない)

また、誰がどのアクションをするかは毎ラウンド最初にアクショントークンを取って決めるのですが、ここで自然とプレイヤー間で話し合いになります。このメカニクスは、協力ゲームだからこそですが、研修ゲーム制作をしている身として大変参考になります。

 

ただ二つほど惜しい点があります。

それはプレイ人数でのバランスが良くないこと。ソロプレイもできますが、ソロだと中盤以降詰んでいき、ほぼクリア不可能(笑)逆にプレイ人数が多い(3~4人)と最終ラウンドをまたずにクリアできたりします。

もう一点はカード記述の甘さ。このケースではどう処理すればいいのか?と言ったことが時々起こります。まあそこはBGGで調べたり、プレイヤー間で納得できる合理的解釈でやればよいのですが。逆にここがまたアナログゲームの良さでもあります。(ちなみにゲームは英語版しかないため、カードは全て和訳済み)

 

ちなみに僕はブルーズやソウル、ジャズなど昔から洋楽が好きで、特に黒人音楽は奴隷制度の歴史と非常に密接な関係があり、それがそもそもこの作品に興味を持ったきっかけの一つです。(好きが高じて、6年ほど前に実際にブルーズツアーでミシシッピーなどアメリカ南部へ行った経験があり、そのとき訪れたロレインモーテル(市民権運動ミュージアム)の記憶が鮮明に残っていたりします)

 

学びの多い素晴らしい作品です。機会があれば是非一度プレイしてみて下さい!

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